音源制作の基本
2019年10月31日 17時22分
何を始めるにしても、基本を知ることがスタートラインになります。音楽の世界でも同じです。制作の基礎は、その後のすべての決定が行われる指針となります。プロセスが乱れると、通常、望ましい結果を得ることはできません。音源制作においては、誰がその「音源制作」をオーダーするのかにより、そのプロセスにも変化があります。
ただ、一般的に音源制作のプロセスは「コンセプト作りとデザイン」です。ここからすべてが始まります。音源制作においては、まず音楽プロデューサーがコンセプトや作業の概要を説明します。
- 音源制作の流れ
- 作曲
- デモテープのレコーディング
- リハーサル
- ベーシックトラック
- オーバーダビング
- 編集
- オーディオミキシング
- マスタリング
という感じになります。
これらのステップは音源制作において、どれも飛ばしたり、外したりすることのできない重要なものです。もしもこのステップのどこかを飛ばすと、後々に影響が出て、結局、完成までによけいな時間がかかることになるでしょう。
よけいな時間がかかるということは、よけいなお金がかかるということにもなります。プロセス通りに物事を実行すると言うことは、音源制作の基本です。順番通りに事を進めれば、どこかでミスが起こったとしても、戻って作業をすることができます。プロセス通りに進める。音源制作を含む物作りにおいて大切なことでしょう。
音源制作のステップ・その1「作曲」
音源制作ですから、音楽がなければ物事は始まりません。そのため曲を作ること、作曲が音源制作のファーストステップになります。作曲という作業には、当たり前ですが、クリエイティビティーが必要です。アイデアとひらめきが曲作りの重要な要素です。
制作する音源は、短いBGMかもしれませんし、少々長めの企業のイメージソングかもしれません。これらの場合はプロの作曲家が作曲を担当することになるでしょう。もしかしたら、これからメジャーデビューを狙うロックバンドのデモテープかもしれません。この場合はバンドメンバーが新曲を作る可能性が高いでしょう。
デビューを狙うロックバンドなら、既に新しい音源のコンセプトが決まっている可能性が高いですが、曲ができあがる前に、サウンドや曲の要素を考え始めることはいただけません。これをやってしまうと、この後に生まれてくるはずの歌詞やメロディーラインに影響してしまいます。曲ができあがってからでないと物事を進めるわけにはいきません。
今は昔と違って音源制作に必要な人、物、などのリソースが豊富です。作曲を作曲家に依頼するにしても、メロディーサンプルなどから雰囲気を感じてもらい、そこから曲作りしてもらうこともできるでしょう。たとえばスマートフォンに鼻歌を吹き込んだり、街中に流れるBGMを録音したりして作曲家に聞かせるだけで、曲作りのための大きな情報になるのではないでしょうか。
作曲家が曲作りをする上で、まず大切にしなければならないことは、新曲のテーマは何なのかを把握することでしょう。新曲は何についての曲なのか?どんな感情を伝えたいのか?テーマが把握できていなければ、確実にとんでもない曲ができあがることになるでしょう。テーマがあって、そこにストーリーが生まれます。
音楽はストーリーです。音源を制作すると言うことはストーリーを紡ぐことです。このストーリーをどのようにリスナーに伝えるのか。曲調、歌詞、メロディーライン、さまざまな曲の要素がストーリーを伝えるためのパーツとなります。リスナーの心をつかむために、どのような要素で曲を組み立てるのか。曲の構造から旋律、コーラスに至るまで、作曲家の、曲の組み立て能力が問われます。
ただ、作曲家としてやはり一番大事にしなければいけないのは、考えることではなく、インスピレーションや感情といった部分でしょう。音楽は人の感情に訴えるものでなければなりません。アイデアやひらめきといった感情的な要素なくして、人の心に響く音楽が生まれることはありません。楽曲の長さは3分から4分もあれば十分でしょう。ただ、この限られた時間の中でメッセージを伝えることは、経験の少ない作曲家にとってはかんたんなことではありません。
かんたんではない作業ですが、作曲が終わり、その出来映えに問題がなければ、次のステップへと進むことができます。デモのレコーディングです。このプロセスでは、リスナーに響かせるために、どのようにこの音楽を届けることがベストなのかを考える必要があります。
音源制作のステップ・その2「デモのレコーディング」
新しい曲が満足のいくものであったならば、一般的にはデモのレコーディングに入ります。「デモテープ」と呼ばれることもありますが、カセットテープ時代の名残ですね。音楽が録音できるのであれば、媒体は問いません。
デモは音源制作に関わるすべての人にとって、参考となるものです。音源を完成させるための教科書と言えるかもしれません。
デモを作ると、新しい曲に潜在的にある問題をあぶり出す効果もあります。実はこれは大切なことで、たとえば「サビへの遷移が何かおかしい」という問題が発生した場合でも、本番のレコーディングまでに問題を解決する時間がとれます。
デモの制作は、関わるすべての人にとっての指針であり、曲にあるちょっとした問題を洗い出す場面でもあるのです。
音源制作のステップ・その3「リハーサル」
リハーサルというと、ライブで行われるコンサートを思い浮かべますが、音源制作においてもリハーサルは必要不可欠です。音源制作の場合は、レコーディングへ向けての準備という意味合いが強いでしょう。バンドでリハーサルを行うことで、
- 曲のアレンジ、テンポの確認
- 曲にあった楽器やトーンの確認
- デモの段階では浮かび上がってこなかった小さな問題の解決
- レコーディングに向けて足りないものは何かを確認
することができます。
音源制作のプロセス・その4「ベーシックトラックのレコーディング」
ベーシックトラックのレコーディングでは、主にリズムセクション、特にドラムとベースが主役です。
音源制作の他のプロセス同様に、プロフェッショナルなレコーディングを行うためには、周到な準備が必要です。その準備の大部分は、音源を完成させるために必要な情報を集める作業になります。
レコーディングの際には、以下のような点に注意しましょう。
- 機材を置く場所に気を配る
- マイクを置く位置で録音は変わる。自分の音を作るために最良のセッティングを見つける
- レコーディングレベルの調整
- ミュージシャンとのコミュニケーション
ベーシックトラックのレコーディングに限ったことではありませんが、上記は基本です。機材関連のテクニカルな部分も大切ですが、やはりレコーディングでは、ミュージシャンとのコミュニケーションを密にとることが望まれます。ミュージシャンと会話するためだけのマイクをスタジオ内に設置して、レコーディングの合間にコミュニケーションをとるようにしましょう。
音源制作のプロセス・その5「オーバーダビング」
ベーシックトラックのレコーディング後はオーバーダビングに移ります。ベーシックトラックの上に、メロディーやボーカルなどのパートを被せていく作業になります。
通常、ベーシックトラックには、ドラムやベースなどの、いわゆる「リズム隊」の演奏がレコーディングされます。そのレコーディングを聴きながら、リードギターやキーボード、ボーカルなどのパートを、それぞれ別トラックに録音していきます。マルチトラックレコーディングは優れた録音方法ではありますが、優れているがゆえの欠点もあります。マルチトラックレコーディングでは、こだわればこだわるほど、パーフェクトに近い形でそれぞれのトラックをレコーディングすることができます。
しかし、あまりにもこだわりすぎると、音楽の持つ躍動感が薄れてしまうことがあります。また、トラックのレイヤーが増えることで、何か音が薄っぺらになりがちです。
音源制作のプロセス・その6「編集」
レコーディング作業が終了すると、録音した音声を編集するステージが待っています。現在の音楽編集は、コンピューターと無縁ではありません。音源を制作するという一連の作業の中で、近年、もっとも技術的進歩の大きかったパートかもしれません。
編集のプロセスにおいても「自分の音」を常に頭に置いておくことが必要です。そうすることで、中途半端な編集で終わることや、無駄に編集しすぎることを防ぐことができます。中途半端な編集はリスナーに何か焦点がぶれているような印象を与え、反対に編集しすぎは、音楽から生命感を奪い取ってしまいます。
音源制作のプロセス・その7「オーディオミキシング」
音源制作のプロセスにおいて、もっとも難しいとされているのがオーディオミキシングでしょう。音楽のプロの中でも、もっとも高給取りはミキシングエンジニアだとされています。ミキシングは、ノイズ除去、ピッチ調整、各トラックのバランス取りなどの作業により、レコーディングした音声をひとつの音楽として響かせることがテーマとなります。
ミキシング作業には、ミキシングコンソールと呼ばれる機器や、DAWソフトウェアを使用します。マルチトラックレコーディングの場合、それぞれのトラックに、異なる楽器のパートがレコーディングされています。ただレコーディングされた状態では、音量やトーン調整がなされていないため、この段階では聴くにたえません。ミキシングの最終目的は、思い描いた「自分の音」で楽曲を響かせることです。ミキシング作業には、豊富な知識と経験が要求されます。
マスタリング
オーディオをマスタリングする。これは楽曲をCDなどの音源に落とし込む作業です。しかし、ただ落とし込むわけではなく、たとえば10曲入りのアルバムを制作する場合、アルバム全体のボリューム、曲間の長さなどを考慮して、アルバム全体をひとつにまとめる作業になります。
元々はレコード製作におけるひとつのプロセスで、レコードをプレスするためのスタンパーを作ることでした。
現在のマスタリングプロセスにおいては、次のような仕事が行われています。
- 曲順を決める
- 編集
- 曲間の長さを決める
- 全体のボリュームレベルやトーンレベルの調整
- 完成音源のプロダクション
実はマスタリングのプロセスで行われる作業は、カセットテープやレコードの時代から特に変わっていません。最終的な作品として完成させるための作業です。シンプルに言えば、マスタリングは1曲ではなく、音源を完成させるために、作品全体のミキシングを行うことだと言えるでしょう。